スバルのモータースポーツ専門部門STiが『レガシィS402』を開発、という発表がなされてからというもの、専門誌はもとよりwebサイトも含めて業界全体が色めきたったものたった。
クルマの性能を物語るとき、世界中のクルマメーカーがバイブルとして特別視しているのが、ドイツのニュルブルクリンクでのテスト走行であるのは今さら言うまでもないだろう。スバルもその例外ではなく、『S402』の研究・開発にはニュルブルクリンクを特別に意識したという。しかもわずか402台に限定された特別なモデルとあって、マーケティングの観点でも業界の注目を集めていた。これだけの血統書が揃えば、そのパフォーマンスに期待するのはファンとして当然のことだろう。
エクステリア:
そんな注目のマシン、まずは外観から検証していこう。一見して言えることは、ベースのB4と比べてこれといった違いは見当たらない、ということだ。一途なファンなら、あくまでも外観の「美しさ」にこだわったフロントバンパーの特別デザインに気付くだろう。『レガシィツーリングワゴン/B4』が溢れる駐車場の中から一台だけ紛れ込んだ『S402 STi』を探し出せ、といわれたとき、素人目にはリアスタイルにさりげなく輝く「STi」のバッジと、フロントに取り付けられた「S402」のバッジぐらいが目印だろう。マシンを一周して至ったこの結論に、僕の頭の中をよぎった疑問は「何故?」…そんなシンプルかつ率直なものだった。
一説によると、『レガシィS402』 Tuned by STiの誕生の裏には、開発チームの熱意とは反比例して予算不足の問題が潜んでいるのだという。限られた予算ならば、外観のモディファイは最低限に抑えてパフォーマンスの向上に集中しようという、当然といえば当然の結論に至ったらしい。そう聞かされれば、ますますステアリングを握るその瞬間に期待がかかるというもの!
走行性能 :
ニュルブルクリンクを走るために特別に開発されたマシン、そういわれてドキドキしないクルマファンはいないだろう。しかも鋼性、サスペンション、ブレーキ性能、パワー…あらゆる要素において念入りなチューニングが施されたというからには、史上最高の一台への期待も高まるというものだ。
「心臓部」に収まるのは、これまでの2.0リッターに代わる2.5リッター水平対向エンジンだ。最大出力282psを発揮、新開発エンジンのパワーを最大限に引き出すべく、専用ECUやツインターボも特別仕様が採用されている。
レガシィの秘めるポテンシャルを余すところなく引き出すため、細部に至るまで気を抜かない丁寧なチューニングが施されているのである。
データの語るところを信用すれば、生涯忘れ得ない体験を約束してくれる伝説のレガシィB4の誕生、である。ところが。実際に走らせて見るとこれが意外や意外、若干期待外れな結果となってしまった。具体的に検証していくことにしよう。
『S402』ではSI-DRIVEもモードごとの特性をはっきりさせつつ改善させたというが、I(インテリジェント)モードに限っていえば、ハイ・パフォーマンスカーとは思えない動力性能で、中途半端なレスポンスといい、スポーツカーには全く似合わない。このインテリジェントモード、これだけのスケールのスポーツカーに搭載する意味はどこにあるのだろうか…『インプレッサWRX STI』のステアリングを握ったときと全く同じ疑問が頭をよぎったのである。これではハンドブレーキをひきっぱなしにして走ったって結果としては変わらないのではないか?
はたしてスポーツシャープ(♯)モードに切り替えてみると、これぞスポーツカー、怪物の本領発揮となった。日本の険しい山間道でのテスト走行で、マシンの秘めるポテンシャルを存分に楽しむことができたのである。
スポーツシャープ(♯)モードでの走行時は、1800rpmの時点から6000rpmに至るまで豊かなトルクを放出、ありとあらゆるシチュエーションに対応する動力性能を満喫できる。コーナリングでは2速の変わりに3速で入っても、パンチの効いたコーナリングアウトを楽しませてくれるのだ!
シートに吸い付けられるような感覚とまではいかないものの、シフトチェンジを重ねるたびに、また右足に力を込めていけばいくほどに、こちらの期待通りの加速をみせてくれる。さらにスバル自慢のAWDで4輪の接地感もよく安心した走りを楽しめた。
辛口批評が続くが、これまでスバル車といえば、ブレーキ性能の反応と耐久性の弱さを批判してきた。『S402』ではその反対に、ブレーキが効く、いや効きすぎる、のである。しかも、攻め込んだ走りのあとはブレーキを踏み込むごとにノイズが気になりだす、という耐久性の課題も抱えたままなのだ。
Conclusion:
結論 :
果たしてこの『S402』、『レガシィツーリングワゴン/B4』中最高級のマシンかと問われると、迷うことなくそうだと答えるだろう。とはいえ、数日間の試乗体験を経た今、何故402台に限定したのか? 細部にわたるまで入念なチューニングが施されているとはいえ、それほどの特別扱いにするほどの性能を持つクルマだろうか? という疑問を拭いきれないのも正直な感想なのである。果たして、次期新型『レガシィツーリングワゴン/B4』あたり、この『S402』の性能を超えるのではないかという気さえしている。そしてドイツの強豪ライバルに大きく水を空ける、今度こそSTiの名に相応しい怪物を放って欲しいとまでも思ってしまう。
最後になるが、インテリアのデザインといい、採用されている素材の質といい、もう少しこだわりが欲しかったところも残念である。
Posted on 04/08/08 By G-A.G