V-TECエンジンにパワーアップチューニングを施し、刺激的なドライビングプレジャーを提供する証ともいえる「タイプR」。さらにいかなるライバルをも寄せ付けることを許さない、爆発的なパワーを象徴するエンブレム「無限」。その「無限」と「タイプR」が融合した夢のマシン、それが『ホンダシビック無限 RR』である。
逸材『シビックTYPE-R』をベースに、ホモロゲーションモデルとして『無限 RR』が発表されたのが昨年の夏(2007年7月)のこと。ロードカーとしても、またサーキットでも充分に通用するマシンとして、無限が誇りを持って開発したこのクルマは、300台限定発売というあくまでも特別な存在なのである。
今回、僕らNihonCarチームは外国人ジャーナリストとして唯一、類稀なる『RR』に試乗する栄誉を得た。ここで本編に入る前に、『RR』のベースとなった『TYPE-R』のNihonCarによる試乗レポート、
「ホンダシビック「タイプR」テストドライブ」
をまだ読んでいない人はそちらの方もチェックすることをお勧めしたい。この『RR』の試乗レポートをより一層楽しんでもらえると思う。
データ
最高出力240ps:タイプR比15psアップ、2.0GL比85psアップ。
最大トルク218Nm:タイプRの215Nmからは若干のアップ、2.0GL比30Nmアップ。
車両総重1255kg:タイプR比15kgダウン、2.0GL比45kgダウン。
Honda CIVIC MUGEN RR, HDTV
(WMV9HD 720p Direct Download "Right click, Save as…")
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Moon Child by COPPE
エクステリア
タイプRと基本的には共通したデザインで、一見しただけではその違いは分かり難いかもしれない。しかし見る人が見れば、無限の技術とこだわりの結晶でもある、高度な空力性能を発揮するデザインがわかるはずだ。
ボンネット上にぱっくりと口を開けるエアインテークや、「無限RR」のロゴが光るカーボン製のフロントグリルなど、空力性能を最大限に引き上げる工夫が隠されている。ワンピースのフロントスポイラーは、車両下部へ空気をより多く導き入れるように特別に設計された。見た目にもアグレッシブで、かなりの存在感を放っている。視線をフロントからサイドに移していくと目にとまる18インチアルミホイール、これも今回RR用に設計され黒に塗装されている。タイヤはPOTENZA RE070(225/40R 18 88Y)。サイドスカートも流れるように美しいラインで、マシンの格の違いを見せつけてくれる。
さらに目を移すと、デュアルエキゾーストパイプとF1スタイルのテールランプなど、リアスタイルにもRRらしさが滲み出る。リアのマイナスリフトを向上させるため、カーボンのリアウィングが取り付けられた。
インテリア
エンジンをかける前からRRのアイデンティティを痛感するインテリア。センターコンソールには、カーステレオユニットの代わりに水温計/油音計/油圧計で構成されるアシストメーターを装備している。ドライバー席とパッセンジャー席には、カーボン素材のバケットシートを採用。少々体重オーバー気味のドライバーには窮屈かもしれない。その他、ぺダルもアルミ製の専用設定を採用、シフトレバー横にはマシンの希少価値を確認するかのようにシリアルナンバー入りプレートが埋め込まれている。
走行性能
車の性能は馬力によって左右される、と思っている人も多いかもしれないが、実はより速く走るにはただただ馬力をあげればいい、という単純なものでもない。この『RR』はまさにそのいい例だろう。前述のデータで示してあるとおり、馬力だけをみると『TYPE-R』と大差ないことになる。では馬力以外に改良されている点はなにか・・・それはカーボンやアルミニウム(ボンネットに利用)素材を採用することによって実現した軽量化だったり、計算されつくした空気特性だったり、ボディ鋼性やサスペンションの強化だったりと、ディテールまで見逃さない総合的なチューニングが施されている。まさにそれこそが「無限」からのメッセージなのかもしれない。
『RR』には、トラクションコントロールシステムが存在しない。もともとレースを前提に開発されたマシンである。サーキット上では必要としない機能を省いた、無限のポリシーを見たような気がした。
たしかに、『TYPE-R』と比較して特別に驚くような加速性能があるわけではない。それでも、やはり虜にならずにはいられない何かを持っているのだ。その「何か」とは。まさに本物のレーシングマシンに乗っている実感、ステアリング操作がそのまま直感的にタイヤに伝わっていく感触。まるでレーシングカートに乗っているような、といえば共感してもらえるかもしれない。度重なるコーナリングも、コントロールを失う不安を感じることもなく、安心して攻め込んでいける。
さすがサーキット走行を念頭においたサスペンションを搭載しているためか、一般道では決して乗り心地のいいマシンではないだろう。路面状態の劣悪が、直接快適性能に影響を及ぼしてくる。やはり『RR』のサスペンションは、サーキットでこそその真価を発揮してくれるのだ。
極めつけは、デュアルエキゾーストパイプから吐き出るVTECエンジンのサウンド。体の奥底まで震え上がらせられるかのように響いてくる。ギアシフトの度に、そしてスピードが上がっていくのに比例して、こちらの興奮も否が応なく引き上げられていくようだ。その興奮は、リミッター制御の160km/hに到達するまで続いた。なんとも水を差されるようで残念なものの、日本の法規で義務付けられているのだから仕方がない。熱くなった頭も、規則には逆らえない、無理矢理に現実に引き戻されてしまうのだ。もちろんサーキット走行時には、リミッター制御は解除できるのでご安心を。
Plus:
評価する点
価格設定
高い空力性能
デザイン
希少価値
走行性能
Minus:
残念な点
居住性
Conclusion:
結論
最初から最後まで『RR』の放つオーラに圧倒され通しのテストドライブだった。走りこんでいくに従って徐々に伝わってくる、無限が培ってきたモータースポーツにおける経験に敬意を表さずにはいられない。ベースとなった『TYPE-R』よりもさらにハイ・パフォーマンスというだけでなく、非の打ち所のない完璧なまでの運動性能を実現しているといっていいだろう。
日本での販売価格はおよそ480万円と、たしかに万人向けでないことは明らかだろう。しかし、その性能と可能性をじっくりと検証していけば、優れたコストパフォーマンスなのだと納得がいくに違いない。『RR』は、まるで「レーシングカーで一般道を走る」という夢物語を合法的に実現したようなもの。テストドライブを終了して、改めて無限の開発チームスタッフに賞賛の意を表したい。
Posted on 18/05/08 By G-A.G