スバル。その永遠の伝説車、インプレッサに最新モデルが発表されてからというもの、どれだけ多くの関連記事が紙面をにぎわせてきたことか。それだけに、賛否両論を分けたスバルの肝いり新モデルのデザインが印象的だ。Nihoncarチームもその例に違わず幾度かにわたって議論を繰り返してきた。トリベッカを彷彿とさせる僕らに言わせればアメリカナイズされすぎたデザインにしろ、(皮肉なことに、アメリカの同胞はこの車をヨーロッパ的すぎると表現するけれど。)今回のモデルチェンジはまるで獰猛な野生動物から飼い慣らされた家猫へと一変してしまったような印象を与える。快適さと安全性を追求することによってそのパフォーマンスはどこかなおざりにされてしまったようである。
モデルチェンジ毎に進歩し続けてきたスバルインプレッサ。ラッキーにもこれまで試乗できたモデルの中で、例えば記憶に新しい
インプレッサWRX STI ラインA。パフォーマンスやエンジンバリエーションの面では申し分ないながらもそのデザインに少し味気なく寂しい印象を持った。さらに日本国内300台限定生産、販売された幻の
インプレッサWRX STI SpecC TypeRA-R 。S204を超えるパフォーマンス性に舌をまいた。そういった過去の経験を考慮すれば、今回の試乗レポートが辛口の批評となるのは避けられない。
スタイル
欧米ではWRXの名で知られているインプレッサS-GT。純粋にその外見だけを問題にすると、従来モデルの面影は跡形もなく、目の前にあるのはシティ・ファミリー志向の色濃い小型セダンだ。
フロントのアグレッシブさはすっかり影を潜め、シンプルで流れるようなラインに取って代わっている。富士重工の原点である航空機生産を連想させるデザインは一貫しているものの、フロントグリルもモデルチェンジされている。依然魅力的ではありながら、スバルが従来からのイメージチェンジに賭けている心意気をしっかりと主張している。
ターボモーター搭載(この点については後でまた別に議論したい)したこのモデル、メカニズムをしっかり冷却するためのいつものフロントフードは健在。といっても、今までになくずっとすっきりしたデザインで従来モデルよりも運転席からの視界が広がった。
変化が最も著しいのはそのサイドとリアスタイル。リア部分のハッチバック(英語の語源は小型セダン)には衝撃的なモデルチェンジで、正直、馴染めない。じっくり観察していると、フロントとリアとそれぞれに異なったチームが担当してデザインしたかのような印象さえも否めない。どっちつかずな仕上がりとなってしまっている。
ドライビングライフ
ここでもスバルはイメージチェンジを図る。トリベッカに少し似ているそのインテリア、正直言ってどう解釈するべきか戸惑ってしまう。とくに触った感じに固いプラスチックなど安価な印象を与えてしまうその素材。シンプルで大人しやかなそのラインはこの車の本来持つスポーティさからはかけ離れてしまっている。
一言でいえば、大衆ファミリーカーということか。それに尽きる。外見の観点からいえばマイナス要素だがその分さらに快適な車内となったことは事実である。例をあげるとその比較的高い天井、シートレベルも若干低くなってさらに広がった車内空間。身長1m80以上のドライバーには無視できないポイントだ。
ダッシュボードに話を移そう。地味なカラー。どこにも見当たらないスバルのロゴや、はたまたスポーティなS-GTらしさ。これまでのブランドイメージががらりと一新された。これまでに感じたぎこちなさを象徴するものにプッシュエンジンスイッチ。ダッシュボード自体から孤立してしまい、まるで片手間に組み立てたかの印象さえ与える。その外にもスバルらしい細部への細かい配慮はどこへいったのだろう・・・ノーコメントとしたい。
エンジン
従来通り、2.0Lターボモーター、出力250ps、トルク333N・m。今更圧倒される数値でもないけれど、それでも少なくなった排ガス量と、改善された消費燃料には触れておきたい。野蛮さを失った変わりにしっかりと文明人化したようだ。
そう。まさしく文明化という言葉がぴったりするこのエンジン。どんなにアクセルを踏み込んで限界までエンジンフル回転させても、これまでのようなあの音、ぞくぞくする興奮は決して得られない。王者ライオンはおとなしい猫へと姿を変えたというのか。やはりスバルの目指しているものは、後部座席で眠る赤ん坊にも優しい、乗っている人すべてに快適な車だということを頭に叩き込むべし、である。
走行性能
このモデルの最大の特徴のひとつはリアサスペンションのダブルウィッシュボーン。カーブでのローリングを最小に抑えより快適で安定した走りをもたらす。
いちどアクセルペダルを踏み込めば気持ちのよいドライブ能力を存分に発揮する。
もちろんスバルの名高いAWD(ALL-WHEEL-DRIVEシステム)塔載のこの車、ドライビングミスをしっかり感知し安全な走行へと導いてくれる。VDC(ビークルダイナミクスコントロール)搭載のモデルを選べばなおさら。どんなカーブも安心して走ることができる。
さらに嬉しいサプライズは正確で効率的な5変速トランスミッション。WRX STI A-Lineのテスト走行でがっかりしたのがうそのような進歩だ。
ステアリング、行儀のよすぎるブレーキ系統、サスペンションも改善の余地はあるにしても、これはファミリーカーなのだということを考えれば十分なのかもしれない
Conclusion:
結論
我らがラリーチャンピオンカーの新しいルックスにはなんだか慣れないけれども、いったんハンドルを握れば実に楽しいドライビングが待っていた。アクセルを踏み込めば踏み込むほど、その楽しみもそれに匹敵するものであった。サスペンション、ブレーキ、ステアリング系統に少し手を加えさえすればスポーティな感覚を求める人にも十分満足できる車になるはず。機械弄りの得意な人なら、このターボ搭載車の秘める実力をもっとダイナミックに引き出すことなんて朝飯前なはず。もちろんサーキット上で楽しむべし!!!
お楽しみはこれで終わりか?インプレッサの名前はこれから発展していくディーゼル車競争の波に消えてしまうのかは?とおもったら大間違い。スバルはさらにパワーアップ、迫力アップした次の新しいインプレッサ、RA-R路線を継ぐ正統スポーツ派 WRX STIを発表するらしい。10月の東京モーターショーが今から待ちきれない!
Posted on 16/07/07 By G-A.G