ホンダシビック新型モデルの発売から数ヶ月。ファン待望の超ハイパフォーマンスバージョン「タイプR」がついに登場した。
だが、そもそも「タイプR」とは何か?
20年ほど前からホンダは、いくつかの車種に「レーシングバージョン」と言ってもいいようなスポーツグレードを設定してきた。これがタイプRである。今のところNSX タイプR、インテグラタイプR、アコードタイプR、シビックタイプRの4車種が販売されている。
というわけで、タイプRのキーワードは「パフォーマンス」だ。ホンダの開発チームも当然のことながらここに一番力をいれている。エンジンやサスペンション、トランスミッション、クラッチを変更するにせよ、ベース車よりも重量を増やし車体の剛性アップをはかるにせよ、ともかく目指しているのはスポーツモデルとしての性能向上だ。
ちなみに、タイプRといえば赤い「H」のエンブレムと白いボディが「公式カラー」のようになっているが、今回は白い広報車両が貸し出し中だったためボディカラーがビビッドブルー・パールのものをテストすることとなった。これもなかなかきれいだ。
ホンダがはじめて「シビック」という名前のクルマを出したのは1973年のこと。そのころ日本のメーカーは、ヨーロッパ向けであれアメリカ向けであれ海外市場向けの車はすべて同じデザインで販売し、国や地域ごとのニーズにまでは合わせないのがふつうだった。ホンダがヨーロッパ、アメリカ、日本それぞれの市場にあわせてシビックのデザインを変えたのもつい最近のことでしかない。だが、このおかげでヨーロッパ向けシビックのデザインはホンダのデザインにはあまり見ない非常にユニークなものになり、他方、アメリカ向けモデルと日本向けモデルは若干の違いはあるものの、互いによく似たデザインとなった。国ごと、地域ごとの性格の違いがよくあらわれていて興味深い。
Honda Civic Type-R, HDTV
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シビックタイプRもシビック同様4ドアのみで販売となっているためか、シビックと比べてエクステリアに大きな違いはみられない。ラジエーターグリルはよりアグレッシブなデザインになっているものの、ベースモデルのデザインを基本的に踏襲しているし、スポーツ仕様のサイドスカートや18インチの大径ホイール、大型リアスポイラーなども、もとのデザインから大きく外れているわけではない。
インテリアにも同じことが言える。ただし、フロントシートはベース車両とは異なり、バケットシートとなった。
というわけで、エクステリアおよびインテリアという外見的な面では、タイプRは2.0GLモデルに限りなく近いものだといえる。
だが、シビックタイプRがベースモデルとほんとうに異なるのは、メカニック面とアエロパーツだ。
たとえばシビックの中で一番出力の高い2.0GLモデルを例にとろう。このモデルは最高出力155PS ,最高トルク188Nm、総重量1300kgとなっている。これに対しタイプRは最高出力225ps、最高トルク215Nm 、総重量1270kgである。つまり、その差は65ps、27Nm、30kgもあるわけだ。公式発表の書類上でこれだけ違うのだから、実際に走らせてみたときに体感する違いはすさまじいものだろう。例によってiVTECエンジンは走行時に伝わる感覚がすばらしいし、街乗りでは燃費もいい。そのうえ走りを楽しみたいときには4500-5000rpmから8000rpmもの回転が可能なモンスターに豹変する。
ここまでのところシビックタイプRの良い面ばかりを紹介してきたが、テストドライブのロケ地に行くまでの道中1000kmのあいだに、唯一ともいえる欠点を発見してしまった。もしかしたらこれはホンダファンの中でも一番熱狂的なファンの気持ちさえ萎えさせてしまうかもしれない。
いや、タイプRが軟弱だとか喘息持ちのようだとか言いたいのではない。iVTECエンジンもとてもよかったし、ハンドル操作も6速ギヤボックスも問題ない。だが問題なのは、サスペンションである。
このクルマの乗り心地がどれほど悪いかというと、たとえば道が少しでもでこぼこになっていたら、クルマに乗っていてもその表面の微細な粒子の形状にいたるまでたちどころにわかるくらいなのである。
たしかに、タイプRはスポーツカーだ。そしてスポーツカーの目的は快適性能を犠牲にしてでも走行性能を高めることだ。だが、いくらなんでもシビックタイプRの乗り心地はひどい。これに比べたらNSXタイプRや、スパルタンな走りで世界中で良くも悪くも知られているロータスエリーゼSはまだいい方だといえる。
ブリジストンでプロのテストパイロットとして働いている西原正樹さんが途中で運転を変わってくれ、さらにわれわれのビデオのためにサーキットでの走行も行ってくれたのだが、プロの西原さんでさえ何時間もこのサスペンションで走ったあとには、まるで暴れ馬のロデオをしたみただった、と話していた。
ホンダがモータースポーツに参加を始めたのが昨日今日のことではないだけに、これほどの性能を持つクルマが、快適性能とロードホールディングスの点で他より劣るのは奇妙である。だが、本当に奇妙だろうか? いや、必ずしもそうではない。まず理解すべきはシビックタイプRはたとえばサーキット・ポール・リカールや、モテギ、筑波のようなサーキットのために作られた車であるということだ。たしかにこのようなでこぼこが一切ないように整備されているサーキットでなら、シビックタイプRも実力を発揮できるだろう。実際、プロモーションビデオでホンダが一番長い時間を割いて紹介しているのもサーキット映像だ。
このように考えると、シビックタイプRのすべてはサーキットでの走りをともかく優先しているというのも驚くにあたらないかもしれない。冒頭で述べたようにシビックタイプRがモータースポーツのためのクルマである以上、妥協は許されないのだ。
Plus:
デザイン
エンジン
走行性能
Minus:
サスペンション
Conclusion:
1000kmほど走行してみたが、かなりのポテンシャルを持つ車だということがよくわかった。とはいえ、オーナーの99%が日常的に走ることになろうふつうの道でも快適なサスペンションがオプション設定されていないことは残念である。
Posted on 13/06/07 By G-A.G