自動車界に飛んできたUFO、規格外の「ミニバン」三菱デリカが3年間のブランクを経てようやく帰ってきた。デリカは日本国外ではほとんど知られていないが、ミニバンの枠を超えた非常にユニークなクルマである(ミニバンとは、バンのようなスタイルと広い居住空間を求める家族の間でバブルのころ人気を博した車種だ)。
初代デリカは大型4WDワゴンではなく、運搬用の実用車だった。1969年に三菱がはじめてデリカを販売したときのエンジンアは、排気量1088cc、最高出力58ps、最高速度115km/h、最大積載量600kgとなっている。歴史的なことはこのくらいにしておくが、デリカという名前が「Delivery:モノを運ぶ」と、「Car:クルマ」を合わせた造語から来ていることは知っておいて欲しい。事実、三菱が実用車モデル以外の個人や家族向けのモデルも作りだしたのは10年後の2代目デリカからである。日本、中国、台湾、フィリピンでは人気があるものの、2004年の生産台数は4万台に届かなかった。
それから3年、2006年東京オートサロンに出展された「プロトタイプ」がついに現実のものとなった。5代目デリカD:5だ。
Mitsubishi Delica D5, HDTV
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車高の高い4WDバンという全体としてのコンセプトは前と変わりないが、D:5の新しいデザインは先代よりもおとなしく、未来的なものとなっている。
デザイン
三菱デザインセンターは堂々として力強く、しかも見た目に心地よいクルマという明確なデザインを打ち出した。このように、単なる小型トラックを未来的でエレガントなクルマにつくりかえるという力技に三菱が成功したのは、リヤとフロンとでのちょっとしたディテールの積み重ねのおかげだ。
われわれが気に入ったのは、たとえばクローム「フロントグリル」、精悍なヘッドライト、プラスチックのアンダーカバーなどだ。オンロードでもオフロードでも簡単に運転できそうである。リヤのデザインはシンプルかつエレガント。サイドスカートと色違いのリヤバンパーによって「冒険好き」な側面が強調されている。またリヤを上下二つに分ける細長いテールランプがサイドのスライドドアとともに全体の統一感を演出している。
D:5のエクステリアは力強い感じだが、デリカがどれほどユニークなクルマか、一番よくわかるのはインテリアだろう。8人乗りのシートはしっかりしていて快適。高級グレードのセダンでしか見ないような居住空間だ。このように乗り心地は重視されているが、精神面での満足にも三菱は注意している。たとえば、後部座席からもよく見えるDVDプレーヤーつきTV/VIDEO液晶画面や、赤外線ヘッドフォンをオプションで設定することができる。コックピットに関しては、新型パジェロのステアリングやアウトランダーで見たクルーズコントロールボタンなど、三菱車のノウハウがあちこちで活かされている。
インテリアの快適性については特に気に入った次の2点を指摘してきたい。
1) さまざまな収納スペースとその使いやすさ
2) 青い天井間接照明。車幅灯かウィンカーが点灯すると同時について、夏の夕暮れ空の下を走っているような自由な感覚が味わえる。
走行性能
D:5は1800kgという重量と大きさにもかかわらず小回りが効くので街乗りにも適している。事実、三菱がデリカに選んだ2.359L MIVECエンジンは最高出力170ps、最高トルク226Nm だ。確かにD:5はレーシングカーからは程遠いかもしれないが、高速や山道での加速はこの種の車にしてはかなりよい。パドルシフトギヤボックスのおかげで、追い越し時などの難しい状況でも簡単に、そして安全にギヤを落とすことができる。
デリカD:5はオンロードで快適に運転できるクルマだ。XXLサイズの車体にもかかわらず、サスペンションがしっかりしているので、カーブでスピンする心配もない。
ともかくデリカは街なかでも比較的使いやすいクルマだ。しかし、最小回転半径が大きいので、渋滞を走るときや駐車をするときのために、車体の大きさには慣れる必要があるだろう。
デリカD:5はオンロードに適したタイヤを履いているものの、オフロードでの運転でも問題ない。車高が高いため障害物を簡単によけられるからだ。たしかに、砂漠を横断するのに170psではギリギリすぎて余裕がないかもしれないが、オフロードでのテスト中に馬力が足りないとはまったく感じなかった。ただ、長い急な上り坂には少し不安も残る。たとえばパジェロであれば超えられるかもしれない坂道だが。
「オフロード」での運転に関してひとつ残念なことをあげるとすれば、オンロードにあわせてつくられたサスペンションに、やや柔軟性がたりないことだ。デリカD:5のオーナーがオフロードを運転してタイヤに泥をつけるようなことはないだろうけれど。
Plus:
居住性
収納スペース
快適性
安全性
Minus:
車体がやや大きすぎること
Conclusion:
三菱デリカD:5は今の流行を100%捕らえたクルマだ。広い居住空間と駆動方式として4WDを採用したことにより、ありふれたワゴンとは一線を画している。また、多目的に使えて、オフロードでも楽しめるクルマがほしいというニーズにしっかりこたえている。
ともかく、デリカD:5のハンドルをにぎるのは大きなよろこびだった。D:5は家族のためのワゴン、三菱のノウハウがすべて活かされたすばらしいクルマである。
Posted on 22/04/07 By G-A.G