前回日産の新型スカイライン350GTのテストで、シリーズごと、モデルごとに、メーカーがいかにわれわれを驚かせてくれるかを説明したと思う。嬉しいことに今日もいいニュースがある。去年12月、インプレッサWRX Sti A-Lineをテストしたのを覚えておいでだろうか? パフォーマンスだけでなくイメージにもこだわる紳士のためのクルマだ。だが、率直に言ってデザインには確かに魅力を感じたものの、全体的なやわらかさのようなものは少し期待はずれだった。いや、もちろんスバルがエンジンを抑え込んだ、とかそういう意味ではない。そうではなくて、山道でコーナーを攻めるよりも縦列駐車のしやすさを考慮したような、よりブルジョワ的で都会的な作りとなっていたのが物足りなかった、という意味だ。参考までに、前回のニュースについては
こちらを参照していただきたい。
というわけで、A-Lineのスポーツパフォーマンスには少しがっかりしたものの、今回ふたたびインプレッサの他モデルをテストすることになった。今度はいわばもっと上級者向けのモデルなので期待はずれということはないだろう。さて、ようやくわれわれはWRX STI Spec C Type RA-Rを手にできることになったわけだが、実は300台限定生産という数字に気をとられて、当サイトNihonCarで紹介するのをすっかり忘れてしまっていた。あああ。
Subaru WRX Type RA-R Test Drive, HDTV
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Subaru WRX Type RA-R Test Drive, HDTV
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一週間後、写真家のダヴィッドと私はこの超限定車テストドライブのため、スバルへと向かった。新宿のスバルでは広報チームの方々が親切にもわれわれを待つインプレッサについてちょっとした説明をしてくれた。ここではそれを参考にしつつ、このType RA-Rの哲学を何語かで、いや何フレーズかで説明したいと思う。開発者の行った変更をネジのひとつひとつに至るまで微に入り細をうがって話していたのではあまりにも退屈だろうから。
(とはいえ、スポーツパーツも充実だ。たとえばストラットマウント、スポーツオイルフィルター、STIオイル、ラジエーターホースセット、ラジエーターキャップ、レーシングブレーキフルード、エアクリーナーエレメント、スタビライザー、チタン素材スポーツマフラー、リヤデフケースカバー、ステンレスメッシュブレーキホースセット、ブレーキパッドセット、18インチ8.5JJホイールセット、スポーツシングルクラッチ、ギヤシフトレバー、フルバケットシート、リヤウイングスポイラーなどが用意されている。)
というわけで、これが誰にでも手に入る初めての、そして正真正銘のレーシングカーだ!
事実スバルはこれからサーキットを始めようとしているパイロットのための「ベース車両」として、Type RA-Rを提案している。またこの分野ではニーズもさまざまなので、ドライバーの好みに合わせて簡単にカスタムできるようなつくりにもなっている。だが、もとがいいクルマなのでそうしたカスタムがほとんど必要ないことも乗ってみればすぐにわかるだろう。と、このようなことを楽しく話している間にも、私はだんだんと待ちきれない気持ちになりイライラしてきた。早くRA-Rを運転したい。一方、同行の写真家ダヴィッドはだんだんと喉が締め付けられるような感覚をもよおしているようだった。それもきつく締め上げられるような。というのもこれからビデオカメラと一眼レフを持って撮影しなくてはならないのは彼であって、私の方は彼を尻目に伊豆スカイラインのドライブを楽しむ予定になっていたので。
こうして新宿のど真ん中、スバルの広報用駐車場でやっとRA-Rを手にすることができた。20mくらい離れてしまうとA-Lineとの違いはデザイン的にはほとんどない。だがよく見ると、18インチリム(POTENZA 235/40R18 RE070)がA-Lineよりスポーティになっているなどの細かな違いがあることに気づく。徐々に近づいてみると、さらにいくつかの違いに目が行くようになった。最も目立つのはルーフベンチレーターだが、次に驚いたのはルーフアンテナだ。ワイパーだけが電動であった20年前を思わせる古めかしいデザインである。これは一体…。そして、RA-Rテストの準備をしながらわれわれはほぼ一秒ごとに新たな発見をすることとなった。たとえばトランクへ荷物を入れる際の不便さ、電動ウィンドーを開閉するたびに感じる恐怖、すなわちそれを壊してしまうんじゃないかという恐怖などである。あるいはドア開閉時の奇妙な音。祖父のルノー・4だってもっと「デラックスな」ドアだったのだが。もちろんスバルのいうように、RA-Rは観光旅行用のクルマではなくレーシングカーなのだ。パーツはすべてパフォーマンスを考えて見直され、修正されている。重量も、過激なダイエットを敢行することでスバルはA-Lineと比べて70kgもの減量をRA-Rで達成した。その結果、このマシンの総重量は1390kgたらずとなっている。これもすべて走りに特化したが故のことだ。フベンチレ
ひとまず「快適に」乗り込んだあとは目的地まで350km飛ばすだけである。ちなみに、日本の制限速度は70~80km/hであること、またこの日はフロントガラスに貼りついた小蝿よりもバイクの数の方が多かったというちょっとしたディテールをつけ加えておこう。ともかく、制限速度をオーバーできないという苦しみを数時間にわたって味わったあとようやく、走りのメッカ伊豆スカイラインに到着した。だが読者をあまりじらすのはよそう。そもそもRA-Rの感動はどうがんばっても十分に説明しきれないような、そんな種類のものなのだし。いや、麻薬のように危険なクルマで、アクセルを踏むのについ夢中になってしまう、といえば一番当たっているだろうか。ギヤ比が低いのでちょっと「クリック」しただけでもドイツ車なみの正確さできっちり加速する。ロードホールディングと走行性能的には、RA-Rは文字通り地面に食いつくのであらを探すのが難しいくらいだ。車体の反応もすばやく、どんなステアリング操作にも直ちに反応する。ブレーキについても同じだ。ちょっと圧力をかけただけで、首から頭を落とすくらいのものすごい勢いでとまる。だがこんなことで驚いてはいけない。パーツひとつひとつのクオリティに至るまでが非常に高いレベルに達している。乗ってみればわかると思うが、本当にレーシングカーのようなのだ。
技術面についても言わねばならないが、ドイツ車のサイトでもあるまいし、あんまり数字にかまけない方針でいきたい。通常、スバルインプレッサWRXの馬力は280psであるが、今回は320psととんでもないことなっている(さかりのついた種馬馬力と命名したい)。もちろんエンジンは1994cc、EJ20 BOXTER 2.0 DOHC。トルクは432Nmものビッグなトルクを発生する。この数字をそれほどたいしたことないように思う向きもあろうが、メーカー発表のスペックを信用してはならないのはもはや常識である。というのも、メーカーは顧客にサプライズを用意してくれるのが常であるし、RA-Rに関して言えば、公表される数字が実際よりも控えめであるというのが、乗ってみた正直な感想だ。
さて、できるだけ率直に結論を述べるとしよう。「NihonCarはこのクルマを買うか?」と聞かれたら? 答えはこうだ、日本円にして400万円近くもする価格を考えても、それでもやっぱり欲しい! だから答えはイエス! 絶対イエスだ!
確かにRA‐Rはファミリーのクルマではない。「すばらしい」サウンドが堪能できるのだが、子供は怖がるし近所の顰蹙を買う恐れもある。また、エンジンがあたたまるとオイルの強いにおいがコックピットに満ちて、サーキットの雰囲気が思い起こされるのだが、そのとき助手席の家族が思い起こしているのはむしろ軽い吐き気だろう。だから家族でディズニーランドにお出かけ的なシチュエーションにはまったく向いていないクルマだといえる。だが、本物のレーシングカーを手にするためなら快適さを犠牲にする覚悟ができているというのなら、RA-Rこそ、あなたが求めているクルマだ。
Photo By David MICHAUD
Posted on 16/02/07 By G-A.G