現在の自動車市場では美しいデザインや高いパフォーマンスを備えていても、それが企業にとって一番収益を生むクルマになるとは限らない(ポルシェの例外を除いて)。たとえばジャガーを例に取ってみよう。イギリス自動車産業の花形のひとつであるこのクルマはたしかに製品はすばらしいが、2006年にフォード社がこのクルマにかけた費用は7億1千5百万USドル近くにものぼっている。一方、同じころルノーの「低価格」ブランド・ダチアは逆の道を選んだ。もちろんこれは日本のメーカーを勝利へと導いたのと同じ道でもある。つまり、「安い」クルマを作ることによって、高級車を売る以上の収益を得るという道である。
たしかに中国など新興国の急激な台頭によって世界経済の方程式が変わろうとしているかもしれないが、今のところ日本のメーカーはコストパフォーマンスの面で優位に立っているし、欧米のメーカーよりも興味深い製品を作っていることもままあるくらいだ。
Toyota Auris Test Drive, HDTV
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こうした日本車メーカーの中で、カローラなどのベストセラーを擁するトヨタはもっとも経験を積んだ会社のひとつである(
カローラ最新モデルのニュースはこちら)。だが、ハッチバック(あるいはコンパクトセダン)の分野では、たとえばフォルクスワーゲン・ゴルフやホンダ・シビックのような強力なライバルに立ち向かう必要に迫れ、さすがのトヨタ・カローラも厳しい競争を強いられてきた。もちろんヴィッツ(国外では「ヤリス」)のおかげでトヨタのイメージは世界的にも良いものとなったが、この成功に満足するようなトヨタではなく、彼らは新たなベストセラーとなるべきクルマを提案したのだ。それが今回紹介するトヨタ・オーリスである。
オーリスのデザインはヴィッツに良く似ている。だが2台並べてみると、オーリスの方には単なる「ファミリー」以上の雰囲気があることがわかる。トヨタのデザイナーがヴィッツのデザインをベースにオーリスのデザインをしたことも明らかだが、全体としてフォルムはむしろ「特徴のない」仕上がりで、個性を求める向きには少しものたりないかもしれない。
オーリスのエクステリアはシンプルだが、ひとたび中に入るとその印象はまったく違ったものとなる。フランスのトヨタデザインセンターがこの魅力的なインテリアを提供するのに多大な貢献をしたことは認めねばなるまい。われわれはヨーロッパの大聖堂建築のフォルムにも似たセンターコンソールのシルエットにすっかり夢中になってしまった。フィリップ・スタルクを彷彿とさせるハンドブレーキもいいアクセントになっている。快適性能と仕上げに関してオーリスは平均的だといえるが、VWゴルフやフォード・フォーカスにはまだ及ばないかもしれない(ただし、トヨタが日本で展開する高級モデル・ブレイドでは快適性能も高級さも勝っているように思う)。だがライバルと比べてオーリスは居住空間が広く、足元の空間にも少し余裕がある点は評価したい。
ディーゼルモデルは国内未発売。1.8L VVT- iエンジン(136ps、175Nmトルク)および1.5L VVT- iエンジン(127ps、127Nmトルク)のヨーロッパモデルとは異なるエンジンが搭載される予定だ。今回テストしたのは1.5Lモデルだが、運転しやすいクルマではあるもののエンジンにパワーが足りない印象は否めなかった。ちなみに、顧客のどんな小さな要望にもこたえようと努力しているトヨタは1.8Lエンジンモデルも用意している。
運転してみればすぐにわかるだろうが、オーリスの静粛性にはおどろかされる。とりわけエンジンの静粛性は高い。また走行性能面は柔らかなサスペンションのおかげで快適なものとなっており、家族みんなで楽しめるだろう。だがオーリスに対して強いて不満を述べるとすれば、われわれの好みからするとブレーキシステムとハンドル操作がちょっとやわらかすぎることだ。
結論としてトヨタはクオリティ/プライス/デザインともによくできたクルマを提供してくれた。しかもカローラのようにパッシブ、アクティブ両面から考えられたさまざまな安全システムを装備している。とはいえカリスマ性が足りないのでドイツ車などの欧州車のほうに魅力を感じる顧客もいるかもしれない。だがトヨタにはまだ「ブレイド」という高級モデルもあることを忘れてはならないだろう。これは上で述べたとおりオーリスの高級快適モデルで、280ps、3.5Lのスポーツモデルまで用意されているという。
Posted on 29/01/07 By G-A.G