ホンダNSX、スポーツカーへの情熱
今日は最新の日本車ニュースではなく、NSXをとりあげたい。90年代に販売され2005年夏に生産が中止された伝説のマシンだ。
たしかにアメリカにも2~3あったが、当時スーパーカーを作っていたのは欧州のいくつかのメーカーだけだった。日本のメーカーはその頃からマーケットで重要な位置を占め、ラリーやF1でも好成績を収めていたものの、フェラーリやアストン・マーチン、ポルシェ、ランボルギーニと互角に戦えるようなマシンは生産していなかった。
もちろん、日本のメーカーにその技術がなかったというのではない。というより問題は資金面での負担と、スーパーカーの分野で名前の売れていないホンダが、強豪揃いの国際市場で冒険をするリスクだった。スーパーカーを作るのは費用がかかる。それも非常に高い費用が。もしゼロからはじめるとしたらなおさらだ。たしかにホンダの場合オートレースでの経験も豊富でこの分野でのイメージもよかったが、それでも世界規模でスーパーカーを販売するのには慎重だった。
NSX, Hommage à une Diva
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だが長年にわたる調査研究の末、ホンダは特別でありながら誰にでも手の届くクルマを開発し、怪物ともいえるようなマシンを作った。自動車産業ひいてはスーパーカーの世界に革命をもたらすだろう最新の技術が用いられていて。
開発にたずさわった人たちやそのコンセプトに触れずにNSXについて話すことはできない。だが、このすばらしいマシンにかかわった人全員に賛辞をささげるのは不可能なので、今回はNSXを支えた2人の人物に特にスポットをあててみたい。私には忘れられない2人だ。
このプロジェクトの要となった人物、それは間違いなく開発責任者の上原繁さんだ。数ヶ月前、われわれはもてぎでお会いすることができたが、非凡な才能を持った人である。考えてもみてほしい。上原さんはNSXのみならずS2000の生みの親でもあるのだ! たった数行たらずで上原さんの人となりを伝え、われわれの尊敬の念まで示すのは難しいが、彼と過ごした2時間は私にとって忘れられないものとなった。上原繁は謙虚で、NSXとS2000で成功をおさめてもそれに慢心していないのがわかった。取材中には開発者である上原さんとNSXの間の強い絆を感じた。NSXは上原さんが実現を夢見たクルマそのもの、すなわち最先端の技術をそなえ、完璧なパフォーマンスを提供し、それでいてクルマとヒトを近づけてくれるそんなクルマだ。逆ではないのだ。
NSXにとってもう一人非常に重要な人物いる。われわれの記憶に深くきざまれたその人とはアイルトン・セナだ。世界一のF1レーサーと目されていた神様セナ。彼はNSX開発の鍵を握る人物でもある。90年代、アイルトン・セナはホンダのF1チームでドライバーを務めると同時に走行テストでも重要な役割を果たしていた。上原さんひきいる開発チームが参考にしたのもそのセナのアドバイスだった。
当時最高のレーサーと何度もF1世界一に輝いた日本のメーカーとの協力によって作られたのだから、NSXが成功するのもあたりまえだ!
当時は明らかに320PSを越える馬力や3.41リッターV8エンジンをそなえたF 348にかなりのアドバンテージがあった。それに、フェラーリはスーパーカーの老舗である。だから当時は「日本娘」があの跳ね馬に勝つなんてことは考えられなかった。
NSXはもっとも馬力のあるモデルType-Rでもターボエンジンではなかったため、3リッター(のちに3.2リッターに変更)エンジンで280PSにすぎず、これではフェラーリに対抗しようがなかった。だが、NSXがすごいのは当時世界最高性能のシャシーおよび、空気工学をふまえて厳密に仕上げられたボディーシェルを採用していたことだ。
具体例をあげよう。F348を運転しているとD1ドライバーになったような気がするがタイムはちぢめられない。だが逆にNSXは文字通り路面にくいつくのでコーナーごとにタイムをかせぎ、最終的にはタイムをちぢめることができるのだ。
高速でもサーキットでもこのことに変わりはない。NSXはわれわれに走る喜びを与えてくれる。街中をエンジンの回転を落として走っているときでさえスピードを感じるし、赤信号でエンストする心配もいらない。
もちろんNSXにも改善の余地はあり、上原さんと開発チームはより高いパフォーマンスを目指して常に研究を重ねた。彼らの頭にあったのはあらゆるシチュエーションで最高のパフォーマンスを発揮するクルマ、そして他のメーカーが作るような馬力だけがとりえのクルマではないクルマだ。完成したマシンはNSX-Rという名づけられた。カーボンをさまざまな部品に採用しているためさらなる軽量化を実現したうえ、空気工学に基づき車体も修正されている。
販売から15年、正直に言わねばならないが、NSXはスーパーカーとしてはトップクラスとはいえなかった。ホンダにこのクルマの生産をやめ他のクルマを作るよう公然と言ったジャーナリストもいるくらいだ。たしかにNSXあるいはNSX-Rはエンツォ・フェラーリやポルシェカレラGTのようなクルマに及ばないかもしれない。だが普通のドライバーでもハイパフォーマンスのマシンを運転できるようにすることで、NSXがスーパーカーにたいするアプローチに革命をもたらしたことは否定できないだろう。そして、今日では他のスーパーカーメーカーもより運転しやすいクルマを提供することにより、このコンセプトの後を追い始めている。
忘れられないすばらしいクルマをつくってくれた上原さんのチームとホンダに感謝をささげたい。あとはホンダが、NSXの後継者にふさわしい革新的なクルマを再び提供してくれるのを待つのみだ。
Posted on 28/11/06 By G-A.G