日本にはスーパーカーやGTといえるものがほとんどない。真のスーパーGTといえるのはいまやコレクターズアイテムとなったNSX/NSX-RやニッサンR390くらいだろう。だが、それでもハイパフォーマンスを誇るマシンを開発するメーカーもある。ランサーエボリューションを開発した三菱がそれだ。そこで今日は最新型エボ、エボワゴン MRをとりあげよう。日本国内のみで販売、生産台数は2500台の超限定モデルだ。
Mitsubishi Lancer Evo IX MR Wagon
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だがまずその歴史を紹介したい。すべては1992年、エボリューションIと名づけられたマシンから始まった。WRC(世界ラリー選手権)向けに作られたこのマシンのエンジンは、4x4でロードホールディングが非常にすぐれた244ps、309Nmトルクを発生する2リッターDOHCターボエンジンだった。
数年後の96年から99年、エボはフィンランド人ドライバー、トミ・マキネンの運転により知名度をあげ、ラリー界の常連となる。
たとえばスバルもインプレッサというすばらしいマシンを提供しているが、毎年のように行ったモデルチェンジを経ても技術面の改善や実質的な変更はほとんどなかった。だが三菱は新型モデルを出すたびにエボのパフォーマンスを高め、ハンドリングとグリップの性能も改善することに成功してきた。
予算の関係で2008年WRCには参加しないとの発表があったが、三菱自動車チームはこれからも研究を重ねていくだろうし、2007年には10代目になる今までとはまた違った新しいエボXを発表してくれることだろう。
だが、今日はエボの中でも少し毛色のかわったエボワゴン MRについて話したい。実は何ヶ月も前にエボワゴンIIXをテストする機会があったのだが、台風のためまともなニュースを書くことができなかった。というわけでテストドライブにふさわしい天候に恵まれた日、われわれはテストをやりなおすことにしたのだが、おりしもこのタイミングはちょうど三菱がエボIIXからIXへモデルを変更したときでもあった。
セダンはほぼ世界中で販売されているが、今日とりあげるMRワゴンが販売されるのは日本だけである。また、白状するが、われわれはベースのエボよりも控えめなワゴンのデザインが特に気に入っている。ベース車のリアスポイラーはまるでどこかのラリーからそのまま出てきたかのようなので。
見た目だけでいうと、エボIXとエボIIXの違いはたとえばフロントスポイラーなどあちこちに加えられたマイナーチェンジだけである。これらを別にすれば、エボIX MRはインテリアにいたるまでエボIIXに非常によく似ている。
技術面で言うとエボワゴン MRには新型のMIVECエンジンシステムが搭載されているが、高出力のわりにトルクは低めだ。MIVECエンジンは2L 16バルブDOHC(GH-CT9W)であり、最高出力280ps、最大トルク400Nmということになっている。ワゴンには6速MTおよび407Nmトルクを発生する5速ATが用意されている。
また三菱によるとMIVECエンジンは先代までのモデルよりも高い性能を持ち、3%も燃料を節約するという。エンジンが大きいので3%の節約は見逃せない。エボワゴンMRのガソリン消費量について知ってもらうために言うと、5日間のテスト中満タンでも220km走れることがなかった。たしかにアクセルを急に踏み込んだりもしたが、それでもいくらなんでも。なので、普通に使うにしても満タンで400km以上走ることは期待しないでほしい。
今回テストするモデルはワゴンだが、セダンとの違いはエクステリアのデザインのみである。トランクは大きくなったものの違いはそれだけだ。この二台は技術面でいうと非常に似ていてパフォーマンスもほぼ同じ。というか、もともとエボはラリーのためのクルマなので無意味に気取る必要もないのだ。ひとたびステアリングをにぎりレカロシートに座れば、インパネ中央には超シンプルで視認性にもすぐれたメーターが見える。メーターには3つのランプがついていて、「ターマック」「グラベル」「スノー」の3つモードから好きな運転モードを選ぶ。
一見ばかばかしく思えるかもしれないが、実際使ってみるとこのシステムは驚くほどよかった。たとえばグラベルモードをためしてみたところ、同じ道をターマックモードで走るよりもスピードもカーブも問題なく楽しめた。ただ、残念ながら今回のテストでは雪道を見つけることができなかったので、ターマックモードとスノーモードの違いをテストすることができなかったのが心残りだ。
また、三菱はスピードメーターをインパネの左端においているので、すこし見にくいかもしれない。ところで面白いのは、スピードメーターとタコメーターの針がシンクロして動くことだ。ギヤ比が小さいためだろう。
走行性能と加速を見てみるとエボは例外的にコストパフォーマンスがいいというか、この値段で最高出力280psの高性能を実現しているものは他にない。というのは、日本ではメーカーの自主規制により280psが上限となっているからである。ただ、実際のところを知るのはむずかしいかもしれない(現在ではすこし状況が異なり、以前より正直になりはじめているメーカーもあるが)。それでもエボは324psはくだらないと思うし、たとえばイギリスでは405bhpすなわち約410psとなっている。もちろん最高出力の規制や馬力の計算の仕方は国によって違うが、明らかにエボが280psたらずということはないだろう。
運転したことのない人にはその魔力がわからないかもしれないが、今回テストしたワゴンも含めてエボは非常に印象的なクルマだ。アクセルを一度ふむだけで、なぜエボがラリーチャンピオンの常連なのかすぐに理解できるだろう。最初の加速から接地性のよさを実感できるはずだ。
東京湾沿岸で最初にテストした日は大雨で池の中にいるかと思うくらいそこらじゅう水浸しで、撮影には最悪のコンディションだったといえる。だが、エボがこうした状況でも文字通り路面に張り付くことがわかったので、接地性のよさをテストするには絶好の機会だった。たしかに少しは横滑りもしたが、そんな場合でも車体は安定していたしコントロールも魔法のようにうまくできた。今回のエボワゴンMRのテストでも砂利道のような悪路面を走ったが、ここでもパフォーマンスは雨の日に負けず劣らず信じられないほどよかった。だがエボの走行性能がずば抜けているといっても、こうしたマシンを乗りこなすにはそれなりの運転技術が必要だということも言っておこう。
たしかにエボは走るよろこびに満ちた本能を刺激するクルマだが、たとえば燃費の悪さや最小回転半径の大きさなどちょっとした欠点もある。それでもエボワゴン MRはわれわれにとって特別なクルマだし、欲しいクルマのひとつだ。またダークなのに控えめなデザインもいいと思う。このクルマを見たらきっと他のドライバーは競争してみたい気持ちになるだろう。直線の高速では少し弱いかもしれないが、エボが実力を発揮するのは山道など比較的路面の悪い状態なので、そうなれば他の追従を許さないはずだ。
Posted on 06/11/06 By G-A.G